思いの果て2


ほどなく唇から離すと、オスカーはジュリアスの耳元で低く囁いた。

「ジュリアス様・・・俺のものになってくれますね?」

ジュリアスは目を見張り、オスカーのアイスブルーの目をみる。

色とは裏腹の燃えるような瞳にめまいがする。

躊躇していると、もう一度かみつくようなキスをしてきた。

口腔を舌でなぞり、舌をからめ吸い付く。

舌を吸い付かれるたび、頭の中がピリピリとしびれる。

「ん・・・んん・・」

何度も何度もそうされて、ジュリアスは体に力が入らなくなってきた。

そんなジュリアスを、オスカーはしっかりと抱きしめて近くにあった

ソファーへおろす。




しだいに上気し紅色に染まってくるジュリアスの白い肌がとても美しくて、オスカーはもう自分を抑えることができなかった。

長い白い服をまさぐり、胸元に手を入れる。

ひやりとしたジュリアスの胸板に小さな突起物を見つけて、手のひらで優しくこするとジュリアスの口から息がもれる。

その様がひどく愛しくて、オスカーはジュリアスのすべてがほしくて、複雑な服を脱がし始めた。

上半身を脱がしたところで、ジュリアスの手がオスカーを制した。

「ジュリアス様・・嫌ですか・・・?」

ジュリアスは横をむきながら、口をひきしめて、それから搾り出すようにつぶやいた。

「ここでは・・・嫌だ」



いつからなのだろうと、ジュリアスは思う。

いつから私はこのものを愛し始めたのだろう。

そう・・・私はオスカーを愛しているのだ・・・。

この気持ちはそれ以外他ならない。

この間の・・・女性と連れ立っていたのを目撃して、私は嫉妬したのだ。

そうなのかと、もう一度ジュリアスは自分の心情に驚き、そして納得する。

・・・矜持が邪魔をしていたのだろうか。

私にとって、矜持はなくてはならないもの。

しかし、それを無くしてまでも手に入れたいものがあるなど、露ほども思わなかった。

このように、女性のように扱われて喜ぶ自分がいるなど思いもしなかったのだ。




オスカーはジュリアスを渾身の力で抱き上げ、隣にある寝室へ連れていった。

ジュリアスにはあらがう気力も力も残っていなかった。

優しくベッドにおろされ、オスカーは服を脱いでジュリアスに覆いかぶさる。

人の肌がこんなにも熱いとは思わなかった。

そして、こんなにも心安らぐとは・・・。




体のあちこちにキスをする度に、ジュリアスの金の髪が波打つ。

思いがけないほどの甘い声。

眉根をよせ、閉じた瞳の長いまつげ

想像したよりずっと華奢な体躯が、切なく愛しい。

俺はまるでこの方を知らなかったのだと、オスカーは思う。

あんなにも近くにいたのに俺は何も知らなかったのだと。

もっともっと知りたい。

すべてを知って、全部を俺のものにしてしまいたい。

激しく狂おしい感情に翻弄されたオスカーは、炎そのものだった。

その激しい感情を受け入れるジュリアスも、最初は苦痛にシーツを指が白くなるほど握りしめたが、しだいに甘い毒が体をまわってくるがごとく、それは快感へと変化する。

「はあ・・あっ・・ああ・・・」

オスカーは何度もジュリアスの名前を呼ぶ。

耳元で低く。何度も何度も。

そのうちに、同性だからわかる感情の高ぶりに気がついたオスカーは指をはわせ、開放へと導く。

ジュリアスの声がいっそう甘さを増し、中心は熱を帯びた。

「う・・・あああ・・あ・・・」

ジュリアスが体をふるわせ、白濁の熱を吐き出し、そのたびにオスカーのものをきつくしめあげ、オスカーも耐え切れず、ジュリアスの体内に己を放った。




「大丈夫ですか?ジュリアス様」

ベッドにぐったりとうつぶせに横たわっているジュリアスに、オスカーは声をかけた。

ちらと横目で見た後、枕に顔をうずめてジュリアスがつぶやく。

「このような時は、様はいらぬ」

「え?」
「・・・私邸では、ジュリアスと呼べ。オスカー」

恐れ多いと一瞬思ったが、それにも増してひどくうれしい感情が湧いてきた。

それで、おずおずと呼んでみる。

「ジュリアス・・・」

オスカー、とジュリアスが答える。

「オスカー、私はそなたを愛してる」

「え?!」

まっすぐに見つめる深い青い瞳。

けしてそらさない。

凛と誇り高く。

そうだと、オスカーは思う。

この誇り高さと、不器用と思わせるほどの真っ直ぐさを、俺は愛したのだと。

オスカーはジュリアスを抱きしめた。

「ありがとうございます、ジュリアス様。愛してます。

ただただ、あなただけを」

「・・・様はいらぬ」

思わず、お互い見つめあった後、笑いあう。

笑いあった後、オスカーがふと窓に目をやると、カーテンの隙間から白いものが見えた。

漆黒の闇から、幾重にも雪が舞い落ちている。

「そうだ。ジュリアス・・・、今日はクリスマスでしたよ」

「クリスマスか・・・」

「天からのプレゼントを、大人になってからもいただけるとは思いませんでした」

そう言って、抱きしめるオスカーにジュリアスは唇を重ねた。




雪は音もなく降り続く。

幾重にも幾重にも・・・




―どうぞ幸せなクリスマスを・・・―







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